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「火に油」

母系家族の父権を持つカイマル翁はヴァールンノールという肩書きを持っっていた。
区の長であり、その上にデーシャヴァーリ(県の王)、また上にナードゥヴァーリ(国の王)がいて、
民衆の美徳の象徴であり、公正なほうを与える立場がありました。 
クルンガーティタ家カイマル翁が亡くなってから、一年がたち双方の憎悪は日に日に増すばかりで、
上町と下町で憎しみあっていたが、灯明の火の油が無くなる様に、口論も少なくなっていました。

ところが、ある美しい朝焼けの昇る日のことです。下町のコーナールの母の家に
クンナッテ カンナンという漁師の男がやってきました。そして母を見ると漁師は言いました。
 「おいらは上町のチャントロール殿様からの言いつけでお祝いの贈り物を預かってきたんだよ。」
とだけいい、包みを地面において、走って去っていきました。
その失礼な態度に腹を立てましたが、母はその包みを取って開けてみることにしました。
日ごろの騒ぎが収まりつつあり、お詫びに何かを送ってきたのでしょう。
金貨かななどと鼻歌まじりにあけてみると、蒼然として、目をそむけました。
中には腐った魚の頭と内臓とひれが魚の形を残して入っていたのです。

怒った母はコーナールを呼び寄せて言いました。
「これが男らしくないあなたの弟からの贈り物ですよ。」といって投げ出して悲しみました。
由緒ある母系家族の家長の母に対しての男らしくない行為に言葉を失いました。
全てを聞いたコーナールは大蛇が頭をもたげる如く、男らしさが立ち上がり、直ちに戦争の準備の命令を下しました。二十一人の兵隊にその腐った魚の包みを見せると兵隊たちは唇を震わせ
 「それは祝いではない、侮辱の贈り物です」 と怒りをあらわにしました。

漁師町に乗り込んだコーナール軍はその目当ての男の家を見つけると、部下は中に入り込み、兵隊は男の首を捕まえると壁に押し付けて力いっぱい殴りつけました。男の妻と娘は恐怖の余り大声で泣き叫んでいます。その返答に騒ぎを聞いて他の兵隊たちも集まり、
 「今にもお前たちの町に火を放って焼き尽くしてしまうぞ!」と脅しつけます。
このことを予想していたチャントロール軍も時を遅れずに乗り込んできました。
そして戦争が始まり、この時の斬りあいで、コーナール軍に四名、
チャントロール軍に十名の犠牲者が出ました。
暴動に満たされたこの町の出来事は、このとき国中に野火の如く広がりました。

「クルンガーティッタ家の後継者相続から始まった戦争、制御不能の問題、
家族の憎しみは血の川を流した。」

その知らせを聞いたナードゥヴァーリ(国王)とデーシャヴァーリ(県王)は
そろってその町に飛んで行き、現場を見た王たちは領民の前で、
コーナールとチャントロール双方の家来も前にして、事情検分しました。
賢明なる王はことの仔細を聞くうちに、どうも年が上か下かの議論は収まりがつかない話であると見てとり、王は鋭い知性から一つの道を思いつき、このいとこ兄弟たちを呼んで言いました。
 「おお、我が尊き民衆よ。お前たちの主張はそれぞれに理があり収まりがつかない。
 そこで私は一計を案じる、トゥルプラム コータッパン大臣の宮殿の門内に金が入った袋と
 銀が入った袋を置いておく。この争いの双方、金の袋を取ったものが兄であり、
 銀を取ったものは弟になる決心をしなさい。
 我が民よ、何か異論は無いか?」
民衆 「・・ございません。異論はございません。 我が尊き王様。 
    王様の栄光よ永遠に続き給え・・・王様の栄光よ永遠に続き給え・・・・。」

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