(第3頁)

屋敷に着いたとき、門の中には髪を結い上げている一人の女の子がいた。
その子は武装した若い二人を見て、震え上がって、中に逃げようとした。
アーロマルウンニは
 「座りなさい。あなたには何もしない。私達は主人のチャンドゥさんに殺された人の
甥っ子なのだ。  そして、チャンドゥさんにそのことを確かめ、問題を終わらせるために来たのだ。」

裏から一人の少年が現れ、女の子に目くばせして合図した。

少女をさえぎってアーロマルウンニは言った。
  
  「俺達は敬意を表しに来たのではない。伯父上の剣が抜けるように小細工して伯父上をだまして殺した男に、剣で答えを聞きに来た者だ。どこだ卑怯者チャンドゥ!!」

少年は恐れて、後ずさりして、家の奥へと逃げた。

二人はその後を追って、屋敷の奥へと走りこみ、閉められた部屋の前までやって来た。

 「戸を開けてくださいよ。チャンドゥ小父さん。」
 「フン!何だお前達は?カラリを習いに来たのか?
笑わせてくれる。そんな嘘はよせよ。」

鍵穴が七つもあるとの内側からチャンドゥの声が聞こえた。

 「習いに来たのではない。教えに来たのですよ。小父さん!」 とアーロマルウンニ。

 「このチャンドゥ様に対して、ふざけたことを言う強い坊や達は一体誰なんだい?」

 「言ったことは必ず守る坊やですよ。」

 「貴様らの舌はだいぶ しつけ がなっていないな。」

 「舌だけではないぞ!我が刃は鍛え込まれている!」

 「生意気な口を利くな!貴様らはどこから来たガキだ!!」

 「プットゥーラム家からだ!」

チャンドゥはそれを聞いて、一瞬黙って、震え上がったが勇気を奮い起こして、答えた。

 「プットゥーラム家からお出ましとは、一人前の男ならもうすでに恨みもなくなった事は私には分かる。それでも御用なら、ここから私は君達を矢で狙うことも準備できてるのだぞ。」

これを聞いたアーロマルウンニは逆上した。
 「切られた幹から再び芽の出る たとえ。小父上は知らないのか?  さあ 出て来い・・戸を開けろ!チャンドゥ!!」

 「く、クソガキが!十八の道場(カラリ)で師範を務める。この私をチャンドゥ先生と呼べないのか?」
 
 「何、先生だと? お唄の先生か?遊びの先生か? 違う!お前など何一つ先生などとは呼ばれない。男とも女とも呼ばれない。卑怯者のチャンドゥというのがお前の呼び名だ。でまかせを並べてないで、私の伯父の剣にしたことを言ってみろ。」
 
 これだけ言って、アーロマルウンニは剣を振るい始めた。その空を切り、鳴り響く轟音を戸越しに、聞いたチャンドゥは持っていた弓矢を落としてしまった。
 素振りが最高潮になったとき、アーロマルウンニは戸を蹴破って、中に飛び込んだ。
 カンナッパウンニもそれに続いて、二人は子持ちの雌虎のように乗り込んでチャンドゥを睨みつけた。
 「あの決闘であなたが付き人をした私の伯父が、灯明の軸で刺し殺された時の事を見ていたのなら、どうぞお話下さい。」

 豚の鳴くようなあがく呼吸で、話すことの出来ないチャンドゥは、傍らにあった麦を入れる袋に手をかけたと思いきや、そこに隠してあったウルミ刀一閃、カンナッパウンニめがけて一撃飛ばしてきた。
それを見切っていたアーロマルウンニ、それをはじき返す。
そして海から飛び跳ねた魚のように小踊りしてチャンドゥめがけて剣を振り下ろす。チャンドゥは舌打ち一つくれてから、術策の限りを尽くして応戦する。が、間もなく疲れて弱くなってきた。
チャンドゥの首筋にピタリ剣を据え、とどめも今かとアーロマルウンニ。
少年の数々の技を見て、死の覚悟をしたチャンドゥは言った。

 「私の死ぬときとなった。伝統の法に従い、死に水を一杯くれないか?」
 「私の伯父が死ぬ前に、あなたは水盃を与えたのか?」

チャンドゥは自分の弟子に目で合図した。
 「私の弟子にこのときのための作法を教えてある。間違いの無い筈だ。 早く水を持ってきてくれ・・・。」
弟子は急いで錫製の手桶に水を持ってきた。
カンナッパは横から言った。

 「アーロマルよ、ちょっとそいつを借りて見てみろ。だまし上手のチャンドゥ先生道場のやることだ。手桶の中は・・・・。」
アーロマルの目は怒りに燃えた。
中には精製バターとごま油で出来た液体。それを頭からかぶれば剣は滑って斬られるのを最小限にする最良の法。
最後の情けを乞い、最期を騙し通そうとしたのだ。アーロマルは手桶をカンナッパに渡し、チャンドゥの弟子に本物の水を持ってこさせた。

冷たい水を飲んだチャンドゥは突如、力を取り戻し、約束を破り猛然とアーロマルに打ちかかってきた。
手練のチャンドゥ。一気に逆転して、アーロマルウンニを追い込む。

しかし、アーロマルは伯父の使っていた剣を見せつけ、叫んだ。
 「これは今まで八人の人を斬ってきた由緒ある剣。そして九人目はお前だ。男らしい最期を与えてやる。」
言い終わるや否や、剣と体と言葉は一体となり、

きらめく 電光! 
吹き上げる 血の壺!

チャンドゥの首級と腕は遠く吹き飛んだ。

カンナッパウンニは、領主より頂いた絹の布をとり、斬られたチャンドゥの頭を包んだ。
そして、立会人であるカンナッパは仇討ちの口上を述べて、二人はそこを引きあげた。

運命の決闘に行った伯父に、偽の剣を渡した男の首級を二人は国に持って帰ってきた。
そして、母ウンニアルチャの足元に額ずいた。


                    ○ ○    (おわり)
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