「身柄引き渡しが先」 ひき逃げ 米兵書類送検へ
12月31日11時0分配信 琉球新報
読谷村楚辺でのひき逃げ死亡事件で、県警が在沖米陸軍トリイ通信施設の2等軍曹の身柄引き渡しを求めずに来年1月4日にも書類送検する方針を固めたことに対し、県内の関係者からは30日、「完全な解決ではない」「弱腰」などと疑問や批判の声が上がった。その上で「身柄引き渡しが先」との指摘や日米地位協定の改定をあらためて強く求めた。
13日の村民総決起大会で事件に強く抗議した読谷村からは起訴前の身柄引き渡しや地位協定改定など抜本的解決を求める声が相次いだ。同村の池原栄順副村長は「事件の早期解決を望んでいた村にとって一定の評価はできる」と話す一方「起訴前の身柄引き渡しができず完全な解決とは言えない。地位協定の大きな壁があり、村として協定の見直しに向け、対策を考える必要がある」と話した。
同村議会の前田善輝議長は「県警は今回のひき逃げ事件をただの交通事故としてとらえているのか」と疑問を呈した。
その上で「遺族が十分に補償されるかも心配だ。本来なら書類送検前に身柄の引き渡しを行うべきだ。これでは米兵は事件を起こしても基地内に逃げれば大丈夫だと思ってしまう」と地位協定改定の必要性を強調した。
県内のほかの関係者からは怒りの声が聞かれた。米軍人・軍属による事件被害者の会の村上有慶さんは「地位協定の壁があるからだろうが、言語道断。こんなことしかできないのか」と憤った。
日本側がこの事件で身柄引き渡しを求めないことに「米兵事件で本土と沖縄の対応の格差が大きすぎる。日本政府が米兵を守る姿勢だ」と批判した。
昨年、地位協定改定などを求め決起した「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」で実行委員長を務めた玉寄哲永さんは「弱腰だ。人がひき殺されたのに書類送検というのは許し難い。亡くなった方に失礼だ」と反発し「米兵たちは事件を起こしても基地内に逃げれば助かると思うに違いない。事態は繰り返される」と危惧(きぐ)し、地位協定の抜本的改定を求めた。
◆遺族「やっと一歩前進」
【読谷】「やっと一歩前進した」。先月読谷村で発生したひき逃げ死亡事件の容疑者である米陸軍トリイ通信施設所属の2等軍曹が年明けにも書類送検されるとの一報を受け、進まぬ捜査にいら立ちを募らせていた遺族に安堵(あんど)感が広がった。
事件発生からすでに50日以上が経過している今回のひき逃げ死亡事件。被害者の実妹は30日、被害者が生前住んでいた同村伊良皆の自宅を掃除で訪れていた。妹は「事件が少しも進まないことに家族全員がいら立ちを募らせていた」とこれまで語られてこなかった遺族の心情を吐露した。
遺族に書類送検の一報が入ったのは29日。遺族の代理人の弁護士を通して伝わった。
「事件から1カ月以上が経過しても何も進まなかったがここでやっと一歩前進した。家族みんながほっとしていると同時に喜んでいる」。長年被害者の身の回りを世話してきた妹は遺族の心境を語りながら安堵の表情を浮かべた。
被害者が亡くなる直前まで住んでいた家を見詰めながら妹は「とにかく事件が早く解決してほしい。家族全員がそれを願っている」と語気を強めた。
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