[辺野古見直し] 「捨て身の一石」が波紋
2009年12月19日 沖縄タイムス 社説
「沖縄の基地負担は全国で分かち合うべきだ」。米軍普天間飛行場の移設問題に関連して大阪府の橋下徹知事が投じた「捨て身の一石」が、さまざまな波紋を描いて広がっている。
橋下知事は全国知事会の戦略会議でもこの問題を取り上げ、「政府から要請があれば知事会が基地問題のテーブルにつくべきだ」と提起した。
以前、沖縄戦末期に自決した大田実海軍中将の決別電報を紹介しつつ、「日本国民はこの言葉をあまりに知らなすぎる」と語ったこともある。 橋下知事の発言と行動は今のところ、孤立した「たった一人の反乱」なのかもしれない。だが、こういう情のこもった勇気ある発言を私たちは最近、大臣からも国会議員からも、ほとんど聞いたことがない。
日米安保体制の重要性を多くの政治家が強調してきたが、米軍基地を引き受けると言った政治家はいない。「ノット・イン・マイ・バックヤード」(自分の裏庭には置かないで)。頭文字をとって「NIMBY症候群」と呼ばれる総論賛成各論反対の議論ばかりがまかり通り、沖縄は、戦後64年にわたって米軍基地の過重負担を担わされ続けてきた。
米軍基地問題は決して沖縄問題ではない。日本の安全保障政策の中核をなす課題であり、日本全体で解決すべき問題だ。
橋下知事の投じた一石が広く国民的関心を呼び起こし、安全保障政策をめぐる生産的な議論に発展することを期待したい。
沖縄タイムス社は、普天間問題や米軍再編のあり方などについて、全国47都道府県知事を対象にアンケートを実施したが、回答した知事は28人にとどまった。
「政府から在沖米軍の一部受け入れを打診された場合、どう対応するか」との質問に「応じる」と回答した知事はゼロ。「国が責任をもって検討すべき問題であり、回答は差し控えたい」との反応が目立った。
沖縄の米軍基地が復帰後も固定化され、負担軽減が一向に実現しないのはなぜか。
小泉純一郎元首相は2004年10月、共同通信社主催の加盟社編集局長会議で講演し、沖縄の負担軽減のため米軍基地の本土移転を進めていく意向を示したが、実現しなかった。なぜか。
端的に言えば、「本土の沖縄化」を危惧(きぐ)した政治家や官僚の不作為と怠慢、国民の間に蔓延(まんえん)するNIMBY症候群によって、議論そのものが封印され、その結果、沖縄に押し込められたのである。
腰の定まらない鳩山政権の迷走ぶりは深く危惧するところだが、歴代総理の中で辺野古移設の見直しを明言したのは唯一、鳩山由紀夫首相だけである。首相の「捨て身の一石」によって見直し作業が実現したのであり、その意義はどんなに強調してもし過ぎることはない。
ここまで来て辺野古に逆戻りするようなことがあれば、収拾のつかない政治的混乱を招くだけだろう。
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