【評価 7】
濶字退寶
これもオリジナル書体です。文字が太く通寶が退く特徴があり、とくに寶字は完全に右寄りになって非常にバランスが悪く感じます。覆輪によるものなのか輪も太く、また広郭です。背にも特徴があり、花押の頭の横引きが極端に太くなります。
なお、この銭と下の短足寶が南部梁川銭座で作られたという説(新渡戸仙岳氏調査)もあるようで興味深い。
接郭濶縁(弱刔輪)
接郭の書体であり、濶縁やや大様のもの。刔輪の度合いが少ないもの。天と輪の間隔で見ると判断しやすい当然ながら本体よりは少ない。
【評価 7】
接郭
一見すると本座銭と同じように感じますが、良く見るとかなり文字が縮小しています。そのため文字全体が郭の方に寄って離輪します。この手法は古寛永の仙台銭で用いられたのが有名で、鋳縮みを防ぐために覆輪して濶縁になったものを刔輪した結果生じます。見てくれのごまかしと原料節約の技法と言えましょう。刔輪の度合いには様々な変化が見られます。
※仮説として接郭が土佐藩であるというものがありました。
→ 2008年11月19日の製作日記
【評価 7】
短足寶
濶字退寶と良く似た制作で、ぼってりとして肉厚です。文字は全体的に萎縮していて通点が横点になります。寶足は短く太く、輪から少し離れます。
【評価 6】
大字
面側書体は完全にオリジナルです。全体に文字は大きいのですが、天の二引きが直線的に力強く、通頭が大きいのが目立ちます。寶冠は右肩下がりです。背側は面側と一転して文字が小さくなります。


平通(鋳ざらい銭)
地肌、輪際、文字際に鋳ざらい痕跡が確認できるもの。全体に少し深字になっています。そんなに大騒ぎするようなものじゃないです。


【評価 珍】
遒勁(大様?)
ここまで堂々とした主張をする書体は珍しいと思います。天保銭の中の有名品であり、超人気銭です。よくオークション市場に出てきますので案外数は存在するのかもしれません。当百銭カタログによると遒勁の銭径はいろいろあるようですが、掲示画像の品は立派な大様のように見えますが、縮尺が分からないため確証はありません。
(平成16年 銀座コインオークションカタログより)


平通が土佐藩銭とされたのは、その筆法と製作が土佐通寶當二百小様に酷似していたためですが、母銭が山口方面に多く出現することと、鋳ざらいなどに近似点があること、テーパーが極端であるという特異性があること、50㎜に近い大型銭があること、筆法に近似点があり、平通を鋳ざらって曳尾に変化していった可能性があることなどの観点から萩藩に異動した事実があります。
方泉處が指摘したように書体変化がほとんどないことや、土佐通寶との共通性の問題も残りますが、私のHPによって古銭界が混乱しても困りますのでここらで体勢に従うことにします。なお、天保銭の場合、資金や物資調達のための使用が本来の目的ですので、藩内で使用するより他地域で流通させたほうがその製造目的がかなうというもの・・・そのため、薩摩藩が大阪で天保銭を大量行使したのは当然のことで、流通地=鋳造地という構図は必ずしも当てはまらないと思います。(私の持論。)また、薩、長、土、肥連合の中で鋳銭関係者の密かな技術交流があったのでは・・・などどいまだ私の中で平通=土佐の夢想は払拭されていません。
ただ、瓜生氏の文献で 平通と曳尾の背文字を比較すると良く似ていると言うくだりは納得できました。
幕府の親藩であった水戸藩に対しては慶応4年(1868年:明治元年でもあります。)に本国と江戸小梅邸において鋳造が認められています。いわゆる正式な官許の元の鋳造開始で、密鋳ではありません。しかしながら銭種の確定については手探り状態で、本座に似た銅質でやや制作が粗いものを皆まとめてしまった感があります。鋳造時期が短い割りに大量で書体が様々な点など疑問が多いのですが、とりあえず旧説を尊重してそのまま掲示を致します。なお、正字とされる一群とされるものについてはさらに考察が必要と思われますので、ここではいったん除外しておきます。
主な書体に 大字 濶字退寶 短足寶 接郭 繊字 遒勁 などがあります。
【評価 1】
平通
面背ともに文字が幅広で大きい。土佐通寶の当二百に書体、制作ともそっくりでこれがなぜ萩藩とされたのかが良く判らなかったのですが、瓜生氏の文献を読みついに私も降伏し、銭籍を異動することにしました。輪側の桐極印は丸く、背の覆輪の様子も下の額輪に近似していると思います。制作はやや粗雑で面に粗い縦やすりの痕が残っています。書体変化はほとんどありません。
鋳肌はざらつくものとやや滑らかなものとがあるそうで、銅色は白黄色が基本ですが稀に白銅色もあるとのこと・・・見てみたいです。
掲示品は長径50.0㎜ 短径32.8㎜ 21.5gの堂々たる大様銭。久々に見直していて気づきました。
【評価 少】
縮通仰二天(小異)
進二天に良く似ていますが、書体形状が微妙に異なります。通辵頭が前に出ることなくこじんまりとしています。寶足もやや長く、後ろ足が垂足寶気味になります。掲示品は保字人偏がやや大きく反り返り、通頭が進まない異品です。縮通は天保泉譜では位付け2位、天保銭図譜でも3位の珍品です。
【評価 1】


方字(赤銅質)
萩銭方字は白銅系のものがほとんどですが、たまに赤い銅質のものが存在するようです。
※赤く発色するものは火中品がありますので過大評価はできません。あくまでもご参考までに・・・。
【評価 4】
方字(白銅質)
方字とは角張った文字の意味です。曳尾に書風は似ますが文字が大きく、通字しんにょうの頭がが長いのが目立ちます。背の花押の形状も本座に近いものになっています。また、郭幅も曳尾に比べると本座に似ています。銅色は曳尾に比べるとやや白銅質気味のものが多いような気がします。
曳尾細字大字
ほんとうに細字です。鋳ざらい痕跡が分かるようなつくりながら、文字の幅が広いつくり。とくに通用、寶貝の幅が広く、天の足も気持ちよく開きます。
【評価 3】
曳尾低頭通
曳尾類は加刀による書体の変化が多く見られます。この銭は通頭が低く、郭から離れます。
(平成17年オークションネットⅤより)


曳尾短二天
天の横引がわずかに短く変化しています。曳尾は太字のものと細字のものがありますが、これはまぎれもなく太字です。
【評価 3】
曳尾(大様)
非常に個性的な書体です。なかでも通字のしんにょう末尾が気持ちよいほど長く尾を引きます。背の花押(下部のサイン)も独特です。
銅色は概ね淡黄色ですが肌が粗く縦のやすり目が全体に残ります。削字変化が非常に多く、手替わりがたくさんあって人気銘柄です。
※別に気に留めていなかったのですが、本銭を計測した結果かなりの大型銭だということが判明しました。
長径50.1㎜ 短形32.8㎜ 重量23.0g
ただし0.1~2㎜は湯道の痕が下方にあるためだと思います。


| 銭種名 | 石持桐 | 普通桐 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 深字 | 多い | 少ない | 天保銭の鑑定と分類のみ存在記述。 |
| 正字 | 多い | 少ない | 普通桐はかなり少ない。 |
| 正字濶縁 | 多い | 少ない | 正字よりは普通桐は存在する。 |
| 正字背異 | (未発見) | 多い | 水戸繊字との共通点多し。別座? |
| 正字背異濶縁 | (未発見) | 多い | 反足寶の名称が一般的。 |
| 正字背異替 | 少ない | 多い | |
| 正字背異替濶縁 | 少ない | 多い |
【評価 7】
【評価 8】
【評価 8】
正字背異替(普通桐)
背の花押が底部だけでなく、右角も丸く変化しています。銭径はさらに縮小し、地肌は粗くごつごつした感じになります。こちらのものには石持桐極印のものが存在します。
※輪幅の差は磨輪によるものらしく、以下のものと銭文径はほとんど差がありません。
当百銭カタログより引用
繊字・背異・背異替の花押の特徴
水戸繊字
【評価 8】
正字背異やや白銅質
材質が黄白色気味のもの。中間体です。制作は粗いのですがやはり地肌は滑らかな感じがします。
【評価 8】
正字背異赤銅質
銅質が赤黒いもので、背の花押の底部が丸く削られています。こちらも外径が48㎜半ばで、本座銭より明らかに縮小しています。瓜生氏の当百銭カタログでは水戸正字背異については銅質についてうたっていないもの(標準銭)と黄銅質のものとがあり、こちらの材質にほうが存在が多いと思われます。制作的には石持桐極印銭に近似していますが、色の違いは明確で水戸銭として同じ範疇にくくるのは躊躇してしまいます。材質は柔らかい感じがして、流通によって肌が滑らかになっています。
※もし、石持桐極印が発見されれば大スクープでしょう。
【評価 7】
正字背異黄銅質
こちらの外径も48.55㎜縮小しており、鋳写しによるものであることが判ります。背異の類はむしろ黄色いものが少なく珍しいと思います。黄色味が増すと銅質が硬くなるような気がします。
※従来は暫定的に石持桐極印銭に入れておりましたが、この書体に石持桐極印が無いことに加え、背花押のツノが短くなる特徴が繊字と同じであり、同系統のものとしてここに異動しました。ただし、銅色が異なる点などまだ研究の余地はあると思います。
【評価 7】
繊字
天保通寶研究会の天保通寶と類似貨幣カタログによると、繊字は正しくは正字背異の系統とされました。本座銭と瓜二つ、郭が中郭気味なのとわずかに細字なのが違う点です。背の當百の當字の冠が歪みうねること、花押の上端のツノが短いことなど微妙に異なります。岡藩銭にも類似していますが郭幅などに差異があります。
【評価 大珍】
繊字(母銭)
非常に珍しい水戸繊字の母銭です。本座銭を模倣して新規に母銭を作ったことが伺われるものとなっています。字画の細さや鋭さなどの特徴が良く現れています。花押の一番上の角が短いという絶対的な特徴があります。
背異と繊字は兄弟銭のような存在ですが、繊字は通用の跳ねがあり、背異は陰起する特徴があります。そのため仙人説は繊字→背異と変化したとの立場。一方、瓜生・板井説は繊字の方が軽量で銭文径の小さいものがあるため背異→繊字 変化説を唱えています。
あるいは原母→錫母段階で分化したとは考えられませんか?
(平成15年銀座コインオークションカタログより)


正字背異濶縁(反足寶)
一般的には反足寶の名称ですが、濶縁の特徴に目がいきます。天保の文字が太く、痩通になり、寶前足が小さく跳ね上がります。背の當冠の第3画が太い特徴もあります。
※濶縁や當冠の特徴は銭の仕上げに問題があるからという意見があります。すなわち表面の砥ぎ落とし仕上げがきついため、濶縁でこのような書風になってしまうというもの。
石持桐極印
正字(極印不明)
鉛分の多い銅質で、本座を写したと思ったのですが、新規母銭からの出来です。銅色は赤黒いものが自然に多くなります。鋳黙りが多く美銭は少ないと思います。
石持桐印が多く、普通桐は珍しい存在なのだそうですが、状態が悪くて良く分からないものが多いと思います。
(当百銭カタログより引用)
【評価 6】
【評価 7】
正字濶縁(石持桐)
通常の濶縁はこの程度。かなり赤味の強い銅色で、文字も縮小しています。覆輪による鋳写しでできたものだろうと思います。これも輪側に石持桐極印銭が打たれています。
古くは水戸正字の一群の中に包括された類なのですが、石持桐極印銭の存在から一部が分割され、九州での大量流布の事実が分かると久留米藩銭とされ、会津濶縁との類似性の事実から再び水戸藩銭が浮上するなど・・・ジプシーのようです。その間、上述したように同グループとされていた水戸正字類は忽然とその姿をくらましました。この点については銭譜類にほとんど記述がなく、収集をしていてまるで神隠しにあったような感覚を覚えていました。
輪側の極印が石持桐という独特の形状であるものがあるだけではなく、独特の銅質や鋳肌は非常に自己主張の強いものです。ただ、個性的ではありますが今ひとつ統一性に欠け、それが混乱を生んだとも言えます。その点を明らかにするのはネット画像が最適でしょう。是非、その違いを感じて下さい。
深字 正字 正字背異替 などが存在し、石持桐極印銭があります。
この類だけを別にしたのにはある意図があります。繊字と背異は実は製作のある部分で非常に近似性が見られる・・・ということを知ったからです。背異(花押異)は製作だけを見れば石持桐極印銭に酷似しているのですが、石持桐極印銭が見つかっていません。
その一方で、石持桐極印銭がどうやら水戸藩銭であろう・・・ということに私は大方納得し始めております。
そうなるとこの類も含めて水戸藩銭としてしまっても良いのですが、とりあえず両種をつなぐ銭種としてここに独立して掲示をしておこうと思います。これらが水戸藩銭であれば正字濶縁と会津濶縁との類似性も納得が行くのですから・・・。
天保銭の中で今ひとつ判りづらいのが水戸藩銭で、その中でも正字と呼ばれる部類は一番どっちつかずの存在でした。昭和31年に勢陽古泉会の天保銭譜で水戸正字として登場したのですが、昭和50年の新訂天保銭図譜では石持桐極印銭のみが久留米正字(仮)として取上げられ、従来の定義の正字は忽然と姿を消しています。瓜生有伸氏の天保通寶当百銭カタログでは背異類の一部だけ水戸銭に復活しましたが、旧来の水戸正字に該当するものは姿を消しています。
姿を消した水戸正字類はいったいどこにいったのかと思いきや・・・現在の通説は『明治期に入って制作された仕上げの荒い一群』・・・すなわち明治吹増銭(俗称:恩賜手)に包括されているそうです。つまり本座広郭の一部に戻されたということです。
ちなみに良く市場に水戸正字母銭として登場してくるものは、今の研究家においては『本座未使用母銭』とするようです。(従来の本座母銭は使用後のもの)
【評価 大珍】
揚足寶
短足寶の変種といって良いのでしょうが、こちらは超珍品とされています。濶縁縮字で小郭になります。寶前足が反り返ります。それだけで価値が100倍以上違ってしまうから恐ろしい。
(平成15年 銀座コインオークションカタログより)


曳尾仰頭通(小頭通)
通字が加刀によって崩れ、とくに通頭が小さく仰ぐように変化しています。
この銭も古くは佐渡銭とされていました。母銭は独特の鋳ざらい技法が用いられていて、古寛永の長門銭にその手法が類似していることや、母銭が西日本の中国地方中心に発見されていることなどから萩藩銭に落ち着きました。同じ書体がないと言われるほど文字変化が多く、また一目で本座でないと分かることから絶大な人気がある銭貨群です。ただし、制作については今ひとつといったところでしょう。
主な書体は 曳尾 方字 進二天 縮通 平通 などですが、平通を除き変化が極めて多いのが特徴です。
曳尾広郭俯頭通厚肉
肥字系の品。上の品も広郭ですが、こちらの背郭も雄大。通頭が俯しています。重量は25gを超えている初期銭。私にとって10枚目の曳尾となりました。
※曳尾は肥字と細字に大別され、それぞれに狭天系が存在します。
曳尾狭天(面細郭破天)
狭天ですが、面郭が細くなり、天字第三画がやや短い。削字変化サンプルとして掲示します。


方字細字狭二天
小川譜で細字(5位)としたものと、類似カタログで細字細郭(15000~20000円)と各譜で狭二天とされるものの中間品でしょうか。
上のものと比べて銭文径も大きそうに見えましたがとくに変化なし。鋳ざらいの結果ですっきりしたものでしょうか?私はここまですっきりした銭文の方字ははじめて見ました。


大字小頭通(偶然?)
通頭がわずかに小さく低い。ただし、類似カタログの解説にある保点が外反りになり、當冠のツが離れるという特色には一致していないため、偶然の鋳不足によるものかと思います。


