称:岡藩銭肥天痩通
天保通寶と類似貨幣カタログでは本座銭に包括されています。やや白味の勝る色調でやすり目が粗く走ります。
やや細い
細い
やや太い
本座?岡?不知広郭手?
おそらく上掲示銭と同じ出自ではないかと思います。
この類は重量配分がいいかげんで、本銭は23.5gもあります。また、同じ製作のもので19gを切るものもあり、重量計測のうるさかった本座であるとは言いきれないと私考しています。
称:秋田本座写
この手のものは昔から秋田本座写と呼ばれていて、東北地方に多く見られるそうですが、出自は定かではありません。
書体は本座そのものでざらざらした鋳肌、側面の粗いやすり目、深く打たれた極印が特徴です。
色は淡褐色のものが多いようですが赤褐色のものもあるようです。
※銭文径の縮小がほとんどなく、本座の末炉銭ではないかとの説もあるようです。
あるいは仙台藩?
極印は深く、側面やすりは粗い
紙やすりのような鋳肌
荒い縦やすり目
称:佐渡本座写
基本的に本座広郭の書体と変わりません。やや製作が粗く、灰銀色のものをこの類に充てています。
本座の白銅質(100円玉の色)のものだとお考え下さい。色を見るには側面の色で見るのが判りやすいと思います。(グレーの色調。)
※本座の銅替りと考えても問題が無いようです。
灰銀色で縦のやすり目
通字小さい
呆点開く
天の二引き進む
離輪して
寶足太い
くちばしは短めの花押
離れる
長貝寶
会津藩銭の特徴はそのざらざらとした鋳肌にあります。
長貝寶は長郭に似ていますがオリジナル性の高い書体で、通尾の跳ね上がりと狭く長い寶貝に特徴があります。天の横引には筆はじめの爪があります。
また、背當のウ冠の幅が広く、第一画が前のめりです。冠のツも大きいのは短貝寶と共通の特徴です。
花押はやや扁平で後端が尖ります。
前に傾斜
小さく跳ねる
細長い
ロ扁平
大字(異頭通)
個性的な大文字の天保銭ですが、対照的に背の文字が小さいのが印象的です。
天の二引きの筆はじめが上方から入るため、横引が直線的で力強いこと、通寶の二文字が横広であることもポイントです。
文字小さい
離れる
― 横幅あり
直線的で
力強い
面文字は全体に大きい
秋田藩銭 小様
基本的には本座の写しなので書体変化はありません。この赤い色と大きさが47.5㎜以下であることが条件です。(例外もあるようです。)
似ているのは石持桐極印銭の正字とかつて南部民鋳とされた額輪の小様赤銅銭、秋田本座写の赤いものですが、いずれも48㎜ぐらいの大きさがあります。
→ 額輪小様
→ 石持桐極印銭正字類
※本座との中間タイプの品で銭形の大きなものも存在するようです。
長径は47.5㎜未満
きれいな純赤色
水戸藩銭 揚足寶
短足寶に似ています。ただしこちらは大珍品です。


つぶれた太い文字が多い
縦方向の荒いやすり目
短いものもある
内側に湾曲する癖
ざらざら肌
内側の方がわずかに低くなる癖・濶縁になる傾向
内側に傾斜する癖
額輪
通常、額輪というとやすり目が粗く文字がつぶれたものが多いのですが、なかにはあまり額輪らしくないものも存在します。
この品の場合、側面極印が小さく土佐のものであったから判別が可能でした。
やや接郭の癖が出ています。
正字
これも本座広郭を覆輪して写したものなので、書体的な特徴はありません。
銅質、製作のみが判別の基準です。
銅色は柔らかな感じのする黒味がかった赤褐色のものが多く見られます。
肌の部分は平滑ではありませんが、会津や土佐のようなきめ細かな粒子が並ぶような肌ではなくごつごつした荒れ肌か、あばた肌といった感じです。側面の極印は石持桐という独特の形状のものが多く見られます。
極印サイズも大きくなります。
やすり目は縦方向にごく弱く見られます。
ごつごつあれ肌~ぬめざら肌
縦方向やすり(弱)
-尖る
離郭(中郭)
名称の由来は文字が郭から離れる癖があること。これは郭の加刀によるものらしい。
私個人的には、背の郭が高く膨らむ癖と、俯辵、大貝寶になることで判断します。
通字の辵頭が長いためやや前のめりに見えます。全体的にはなよなよした小文字体。寶字は貝の部分が大きくなっています。
背の當字の田画は歪むものが多く、百の字はほとんどが右上がりになります。(例外あり)
百の白は下すぼまりです。
花押にも癖があり、これだけで判断することも可能ですがある程度の眼力が必要でしょう。
後端が下がるため角度浅い
長く
前のめり
貝が大きい
下すぼみ
右上がり
膨らむ
すっと伸びる
離れる
―文字は小さい
会津藩銭 濶縁
これは本座広郭の覆輪写しなので、書体的な特徴はとくにありません。ただ、写されただけあって文字はとても小さくなります。独特の会津のあれ肌と、縮小した本座広郭の書体で判別します。
濶縁という名前がついていますが、中には中途半端なものもあるようです。
背郭が反郭気味になるということですが、確実にそうだとも言えません。
花押後端が丸くなること、極印が小さめで深く打ち込まれているのは鑑定ポイントです。
銅色は赤~黄茶褐色のものまでが見られます。
この手のものには
土佐額輪・久留米正字類・水戸接郭などがあります。
反郭気味
あれ肌
濶縁
丸い
短く開く
短い
細い
深字
小文字の軽量銭です。深彫りであること、細めの郭、右下がりの寶冠が鑑識ポイントです。
文字が離れるといってもわずかです。背當の位置を見ると良いかもしれません。
文字歪む
離れる
細めの郭
反りが強い
右下がりの冠
冠点も斜め
彫りが深い
全体に細字・個体差多し
反り、上に飛び出す癖
短い
鋭く跳ねる
やや細い郭
水戸 正字背異
繊字とは兄弟銭です。書体は本座を写したものですが背の花押の一番上の角が短く、袋の下角が丸くなります。
銅色はいろいろで、赤いものから黄色いものまであるようです。
短い
丸い
荒いやすり目が多い・銅色はいろいろ・・・
くちばしが長く伸びる
下方向に爪
反り返る
水戸藩銭 短足寶
横点通になるのはこの書体だけ。寶足が丸く短くなること、背の百の横引に筆だまりがあるのも特色です。面側はやや太字で深彫りです。
少し短い
爪
短い足
横点通
会津藩銭 萎字
素朴な書体の大珍品。出会うだけでラッキー。市場には滅多に出てきません。
辵頭長い
平たい
(浄法寺)小字(仕上通用)
非常にすっきりした格調ある書体。密造であることを少しも隠さない自己主張は藩鋳銭系ならではのもの。
通辵の頭が長いのが目立ち通字が平たく見えます。良く観察するとしんにょうの折頭にわずかにカギ爪のような膨らみもあります。
上に持ち上がる
萩藩銭 平通
これも実に個性的な書体です。文字は全体に幅広ですが通字が上下に圧縮されて窮屈そうです。
銭径の大きいものが多いと思います。
背の當百はとても幅広。百の横引が長く弓状にしなるのが印象的です。
濶字退寶に面文の癖が似ていて初心者は間違えやすいと思いますが、背の特徴は全く違います。
広い
全体に幅広
平たい
― 小さい花押
細めの郭
隙間大きい
薩摩藩銭 (横郭短尾通)
あきらかに本座長郭がモデルです。
ガマ口と呼ばれるほど穿が大きく、文字も全体に横広で気持ちよいほど大きくなります。
書体は本座長郭を模したものとすぐに判ります。
銭形も横広で大きくなります。
また、文字が大きいためどうしても細縁気味になります。
他に穿がやや縦長で通尾の長いものもあります。
幅広でどっしり!
ガマ口と言われるほど広い
ステップ2 中央の穴がとても広い!文字も大きい。 → 薩摩前期銭類
通尾が長い
短いのもある
幅広
狭い
力強い
縦向きで長い
薩摩藩銭 広郭
本座広郭に酷似しています。一般的に背郭と通字の形で見分けますが、慣れないうちは難しいかもしれません。
ただ、これをクリアしないと天保銭分類は覚つきません。この書体の癖を頭にたたきこんで下さい。
保:口画の第一画が上部に出る癖があるため横画が反り気味のものが多い。ホ後点が立ち長い。
(これは私の識別ポイントです。)
通:一番癖が強い。辵頭はやや下向き。しんにゅうの下部は力感があり、長く払われる。
(短尾通もあります。)
當:田の幅が広い。
その他:背郭が広く、穿が狭い。銅色が黄色いものは本座に良く似ています。極印は小さい。
銭文径は本座よりわずかに大きくなります。
(41.5㎜以上)
中央部が盛り上がる印象
幅広の田
狭用通
わずかに右寄り
狭貝寶
勢いあり
下から入る
長い
本座長郭
こちらがはじめて出た書体です。広郭とはことなりかなり癖があります。
天:中心位置が右寄りにあるため前足がわずかに長くふんぞり返る印象があります。
保:人偏の傾斜が少しきつく、保点が長く湾曲します。文字全体が縦に長い印象。
通:折頭(しんにゅうの折り返し点)の先端が辵頭とほぼ並びます。そのため辵がふんぞり返る印象があります。狭用通で通尾も勢い良く跳ね上がる感じ。辵頭、折頭とも下の方から筆が入っています。
寶:尓の後天長く湾曲。狭貝寶になる。

天保銭を収集していて分類に行き詰ることもあろうと思います。ここでは各藩の基本銭を中心に分類のポイントを示します。なお、天保銭には寛永銭類とは異なり、例外的な不知銭が多数存在しますので、その点を充分にご理解の上でご覧下さい。
― 上反る癖
秋田藩銭 (広横郭)
秋田藩銭は色が赤いものが多いのですが、細郭などは黄色のものが中心で、絶対条件ではありません。
書体的な特徴は通字のしんにょうの横引のうねりで、気持ちよいほど上下に丸くうねり長く尾を引きます。また、寶尓の両方の点が長く縦向きになっています。
背は文字、花押とも大きく、花押のカーブが上に盛り上がっている独特の形状です。
(盛岡大字や萩平通も同じような癖があります。)
尓点が縦向きで長い
うねり強く長い
カーブ強い
文字大
【本座銭の基本書体】
― やや俯す
(浄法寺) 大字(改造母銭)
盛岡藩銭も説明不要なぐらい個性的な書体です。文字は巨大で太細がはっきりしていて、通の折頭にかぎ爪があります。
雰囲気的にはなんとなく濶字退寶に似ている書体だと思います。
大きい
爪がある
圧縮状態!
大きい
爪がある
盛岡藩銭銅山手(本炉:大様)
これも非常に個性的な、しかも格式のある書体です。通字の折頭にかぎ爪があるのは大字と同じですが、通字が縦長に大きく寶字を圧縮します。
極端に銭径差がある場合があります。
例示品はほぼ最大様のものです。
持ち上がる
― 前に傾く
水戸藩銭 濶字退寶
個性派書体の代表格で、よくネットオークションに珍品面をして出ていますが、雑銭に近い存在です。通字前のめり、寶字が引き気味で実にアンバランス。
背の當百もはっきり前に傾きます。
決定的なのは背の花押の頭が極太なこと。慣れるとこれだけで判別が可能なぐらいです。
― 力強い
反り返る
頭が太い
濶縁
貝が退く
前のめり
平たい
反り強い
薩摩広郭の書体。保の点の角度が違う。
銭形は横太りの独特な形状
横広の郭
反り返る
反り飛び出す
三日月の点
跳ね上がる
大きい
横広


水戸藩銭 遒勁(小足寶)
個性派書体の代表です。もちろん、一度見たら忘れられない存在です。
郭が横長、覆輪をしたのか銭径が縦方向に縮み横に広い独特の形状です。文字の端々に修飾が見られ、縦画や点は弓状(三日月状)に反り返る癖があります。
通用の右肩に突起状の飛び出しがあり、寶尓の第3画と4画が接します。
こんな個性的な書体を堂々と出してくるのは、かなり力のあった藩だったと思います。
贋作が非常に多く、正型抜きあるいは母銭からの写しのようで特徴もそのまま伝えているものが多く注意が必要です。贋作は全体に肥字になるものが多いようです。意外に長径は短く、その反面短径はたっぷりとられています。
独特の魚子肌
長い足
反る癖(郭)
少し離れる
太い


仙台藩銭 長足寶(小様)
本座銭の覆輪刔輪銭ながら、巧妙にその癖を隠す工夫がされています。天字第一画を太くし、寶足をすっと伸ばしています。背郭が反り返るのは覆輪変形によるものでしょうか。しかしその最大の特徴は、魚子(ななこ)と称される独特の粒子状地肌。また、画像には現れづらいのですが面側には地肌を縦方向に鋳浚った条痕が複数観察できます。銅質はやや白銅質のものが多く、黒く変色していることが多いようです。

大字には色々な書体があって、実際にはほとんど中字と同じ文字の大きさのものもあります。
ここにある大字狭貝寶はその典型です。
したがって見分けにはある程度の慣れも必要ですが決定的なポイントがひとつだけあります。
中字はしんにょうの横引のうねりが強く、通用の下横引の前方としんにょう横引の隙間がほとんど無い状態で(あたかも田の字のように)接します。
一方、大字はきちんと用の形を保って接してます。
用の形の長短で見分けるのがもっとも判りやすいと思いますので、是非お試し下さい。
中字長柱球
大字狭貝寶(桐極印)
しんにょうと用横引に
間隔(高さ)あり
ここまでで出てこなかった珍銭類
左下:反玉寶 やや真鍮質で荒れ肌 王画が反り尓と連なる
右下:薩摩小字 不知小字もほぼ同じ書体
存在を忘れてはいけませんが、まず滅多なことではあえないでしょう。



