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Q&A

ペットに遺産を残す方法

僕に遺産?!ワンだふる!
ペットに遺産を残す方法として、理論上四つの方法が考えられます

1 「負担付遺贈」による方法

2 負担付き「死因贈与」による方法

3 「信託契約」を活用する方法


4 「財団法人」を設立する方法

それぞれの方式を比較しつつペットにどうすれば遺産を残せるのか、考えてみましょう

Q.ペットに遺産を残せるってホント?

.現在の日本の法律では、動物は「物」として扱われており、権利主体とはなれません。従って、厳密にはペットは遺産を相続できません。

Q。えっそれじゃどうやって遺産を残すんです?!

A.ペットの猫ちゃんやワンちゃんに直接遺産を残すことはできませんので、代わりにペットの世話をしてくれる人を選んで、その人に「ペットの世話を最後まできちんと見ること」を条件に財産を贈与すると遺言します。これを「負担付遺贈」(民法1002条ほかと言います。ちなみに、この場合の「人」とは「自然人」(普通の人)だけでなく、「法人」(会社、組合など)も含まれます

.具体的に、どのような手続きをするんですか?

A. 「遺贈」は遺言によって行います。具体的には遺言書に「○○にペットの××の世話をすることを条件に、△△△万円譲与する」と、記述します。

Q. それで本当にペットの世話をきちんと見てくれるんでしょうか?

. それはなんとも言えません。そもそも「遺言」とはそれを作った人(遺言者)の一方的な意思表示です。遺言書で「負担付遺贈」の受遺者(もらう人)に指名されたからと言って、絶対それを受け入れなければならないわけではありません。もし「負担」の部分が重いと感じるなら、「遺贈」を断ること(放棄)も出来ます。それを避けるためには、事前にペットを託そうと考えてる相手とよく話し合って、合意を取り付けておくべきです。
 また、受遺者がお金だけもらってペットの世話を全然見ない可能性もあります。当然のことながら、ペットの猫ちゃんやワンちゃんが自分で「債務不履行」を訴えることはできません(そもそもペットは権利主体たりえない)。そこで、遺言書で「遺言執行者」(民法1006条)を指定し、きちんとペットの飼養が行われているかチェックしてもらう必要があります。予め信頼できる人物に頼んでから遺言書を作成するべきです。
 ※遺言執行者には遺贈義務者(より正確には遺贈履行義務者)という側面もある。

Q. 「死因贈与」って何ですか

A. 「死因贈与」(民法554条)は贈与者(金銭等を与える人)の死亡によって効力を生じる贈与契約のことです。「遺贈」とよく似ていますが、「遺贈」が遺言による一方的な意思表示(単独行為)であるのに対し、「死因贈与」は「贈与契約」であり、与える側と受ける側、双方の合意によって成立します。従って、契約である以上、「遺贈」のように一方的に放棄することはできません。そこで、「ペットの世話をみる」という条件(負担)を付けた「(死因)贈与契約」を結べば、「負担付遺贈」よりもペットの世話をみてもらう点で、より確実性が高いと言えそうです。
 ただし、やはり「負担付遺贈」と同じように、お金だけもらって後はほったらかしという危険は避けられません。その場合、遺言執行者や動物愛護団体等に「委託」して、チェックしてもらう必要があります。あるいは、最初から動物愛護団体等に自分の死後のペットの世話を頼む代わりに「負担付贈与」(民法553条)することも出来ます。「死因贈与」ではなく、生前に信頼できる人物や団体にペットの世話を条件に「負担付贈与」を行う方法もあります。

 結局、「負担付遺贈」にしても「負担付死因贈与」(あるいは生前「負担付贈与」)にしても、信頼できる人物なり団体なりに後事を託する他ないといえます。

Q. 「信託制度」とは何ですか

A. 「信託」とは、他者のために財産を預かり、管理・処分することです。「信託制度」とは「委託者」(財産を所有している人)が財産を自分で管理・運用せず、契約または遺言で受託者(信託会社・信託銀行など)に委ね、自分に代わって管理・運用してもらう制度です。
 信託には「委託者」(財産を信託するもの)「受託者」(財産を管理・運用するもの)及び「受益者」(信託により利益を受けるもの)がいます。「委託者」はある目的に沿って自分の財産を「受託者」に信託し(このとき所有権が移転する)「受託者」は信託の目的に沿って「信託財産」を管理・運用し、「受益者」は「受託者」から財産交付を受けるという仕組みです。

Q. 「信託制度」をどのようにペットのために使うんですか

A. 信託の機能として(1)財産の長期管理機能(2)財産の分配機能(3)受益者連続機能(4)倒産隔離機能があります。このうち「財産の長期管理機能」に着目します。
 財産を信託することにより、信託財産は「受託者」の管理下におかれます。信託財産は「委託者」の信託設定時の意思(遺志)に拘束され、他の目的に転用されたり相続人等の要求によって引き出されることもありません(所有権は受託者にあり、委託者自身やその相続人に所有権は無い)。従って、一定の財産をある目的のために長期に亘って管理させるのに適しています。(信託の「意思凍結機能」)
 ペットの飼養は、何年かかるかわからないため、掛る費用をその間安全にプールしておく必要があります。そこで、「信託制度」をうまく利用することで、長期にわたってペットのための財産を管理・運用させ、必要な時に財産交付させることが出来ます。信託の設定は、生前に契約として行うことも、遺言で行うことも出来ます。

Q. 具体的にどんな仕組みをとるんですか?

A.例えばペットの飼い主を「委託者」、信託銀行を「受託者」、ペットの世話をしてくれる人、もしくは団体、企業などを「受益者」とする。「委託者の死後、残されたペットの世話をする」という信託目的のために「委託者」が一定の財産を信託し、「受託者」は信託財産を管理する。「受益者」はペットの世話をする報酬と必要な経費を「受託者」から交付されるという仕組みが考えられます。信託設定は契約と遺言、どちらでも可能です。
 また、『目的信託』(受益者の定めのない信託)という方法も考えられます。従来、信託を設定する際「公益信託」(祭祀等、公益目的のための信託)以外では、必ず「受益者」を定めないと有効な信託契約とみなされなかったのですが、平成18年の信託法大改正(「新信託法」)により、日本でもようやく認められるようになった制度です。
 たとえば、「委託者」が「自分の死後、自分の預貯金をすべてペットの猫、クロのために使ってほしい(信託目的)。ついては、クロの世話をお願いする××動物愛護団体を信託管理人に指定する」と遺言することで成立します(遺言信託)。この場合、実質的な受益者は猫のクロちゃんなわけですが、権利主体ではないクロちゃんは「受益者」とは言えません。このように「受益者」が存在しない信託契約も法律上は有効に成立することになりました。(ちなみに、アメリカの信託法にはペットの世話を目的とした「ペット信託」があるそうです)
 「新信託法」により、従来にはなかった様々な信託商品やサービスが生まれる可能性が出てきました。ペットのための信託について、やや詳しい図を下に記します。




Q. 「信託制度」のメリットは

A. 財産の管理・処分権限は「受託者」に帰するため、「受益者」であるペットの世話を引き受けた人が財産交付を申し出ても、「受託者」である信託銀行等が財産の使い道をチェックしてから交付するので、不正な財産交付を未然に防ぐことが期待できます。(「受託者」には信託事務につき、信託の本旨に従って処理する義務(信託事務処理義務・新信託法29条1)、及び善管注意義務(新信託法29条2)がかせられている。)
 いわば、財布のひもを握っていてもらえるところがメリットと言えます。

Q. 問題点は

A. 残念ながら、法律の整備は進んだものの、実際に信託を受けてくれる信託銀行があるかどうかがわからない。
信託協会電話で問い合わせてみたものの、法律上は可能でも実際それを業務として受けるかどうかは分らないと言う。ネックになるのは実際どれぐらいの財産が信託されるのか、ペットを世話する側がビジネスの相手として信用できるかどうかが問題だと言う。確かに商売として行う以上、その辺が気になるのは仕方のないところです。結局、個々の信託銀行に確認してからでないと、難しいと言うのが現在の状況です。

Q. 他にはどんな方法がありますか

.かなり大がかりな方法ですが、「財団法人」をつくることもできます。「財団法人」とは簡単にいえば一定の財産そのものに法人格を与えるものです(「社団法人」は人の集まりに法人格を与える)。民法第39条によれば、財団法人を設立しようとするものは、1財団の目的、2名称、3事務所の所在地、4資産に関する規定、5理事の任免に関する規定を定めることとされており、これを称して「寄附行為」と言います(共同募金に寄付するのとは違います)。さらに、民法41条2項ではこの「寄附行為」は遺言でも出来るとしています。そこで、自分の死後、「遺されたペットの面倒を最後までみること」を目的とする「財団法人」をつくるという遺言をすることで、後の世話を「財団法人」に委ねることができます。
 例えばペットと暮らした自分の持家を「財団法人」に管理させ、ペットシッターにペットの世話させたり、契約している獣医さんに定期的に健康診断してもらうことも出来ます。動物は(人間も含めて)環境の変化に意外にもろいものですが、特に縄張りに固執する傾向の強い猫ちゃんなどは、住み慣れた家を離れることはかなりの苦痛となるでしょう(老齢の猫ならなおさら)。そこで、住み慣れた我が家をそのまま残して上げられれば、猫ちゃんも安心して余生を過ごせるのではないかと思います。
 ただし、最初にも述べましたがこれは大変手間もかかるしお金もかかるやり方です。数千万から億単位で財産を持ってる人でないと出来ないでしょう。(日本でそこまでやるか?!)

以上、現状では信頼できる人(もしくは団体)に「負担付遺贈」もしくは「負担付(死因)贈与契約」するというのが、現実的な方法と言えそうです。
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