日出ずる国の人々     Sakon Tatibana 本文へジャンプ

日出ずる国の人々

 序章 出窒フ騒乱   第一部 火麻呂

 
第二部 白虎と青龍  十月十五日 本の泉社から刊行

 第三部 罔両   第四部 飛天  
外伝 こいぎつ




序章 出羽の騒乱
 
天平と云われた時代の始まりとも言える、聖武天皇が即位した西暦七百二十四年夏、
出窒ナ何が起こったのか? 続日本紀が隠した歴史の謎に挑戦した作品。
藤原朝臣宇合(うまかい)、蝦夷の盟主文殊王毛賀美公、そして一介の文官として参戦した
高梓の叡智をの限りを尽くした戦い。倭国から日出ずる国へ、日出ずる国から文明国家日本へ。
日出ずる国の人々をより理解するために必衰の作品ですが、いまのところ出版の予定は有りません。

興味のある方は方はメールでご連絡下さい。PDF或いは一太郎8のデータを添付して送信致します。


第一部 火麻呂
悲運の防人火麻呂と愛妻雅の壮絶な運命を描いた作品!

火麻呂 プロローグ
 むかし、火麻呂と呼ばれる防人がいた。
 防人十人の隊長、火長だったからそう呼ばれたのか、炎のような心を持っていたからなのかはわからない。
 火麻呂は悪行の限りを尽くした。犯し、奪い、殺し、その上生みの母をも殺そうとした為、日本最古の説話集、日本霊異記にその名を残した。
 
第一章 ふぢの御衣 

 防人に 行くは誰が背と 問ふ人を 見るが羨(とも)しさ 物思(ものも)いもせず

 武蔵国多摩郡鴨郷(かものさと)の外れの杜(もり)に防人に召集された壮丁とその家族が群れていた。
 雅は少し離れた小高い丘から吉志火麻呂(きしのひまろ)を見送っていた。雑踏の中にどうしても入る気になれなかったのだ。
 逞しいはずの火麻呂がやけに寂しく小さく見えた。
 火麻呂の視線が藤衣(ふじごろも)の(ふじごろも)雅を片時も離さない。
 ようやく愛情が芽生えつつあったのに。三年もの間待つ事など出来るだろうか。火麻呂が防人に行けば実家に連れ戻されるに違いない。
 同じキシでも一介の兵卒としていく難波吉志(なにわのきし)の火麻呂に比べ、雅は公卿の末席に連なる紀氏の娘であった。

公卿の娘としての養育を受けた雅は親の期待に違わぬ教養と美貌を身に着けていた。そんな雅に武蔵国守葛麻呂(くずまろ)が懸想し、婚姻を迫った。
雅はどうしても貧弱で野卑な葛麻呂を好きになれなかったが、定めと思い諦めていた。
そんな七月のある日の夕方、森はずれで一団の若者とすれ違った。
その一人、顔中髭だらけの逞しい男が雅に見とれて目を離さない。
「ああ嫌だ、まるで獣のよう」
 と思った。だけでなく侍女にそう囁いていた。
 言葉とは裏腹に雅は別のことを深層で考えていた。
「夫にするならあんな男が良いわ。契るなら、そよ風からも守ってくれそうも無い葛麻呂より、せめて彼の男の胸に抱かれたい」
 突風が巻き上がり、砂煙が男の視線から雅を隠し、妄想を吹き飛ばした。

 その夜、激しい嵐が武蔵を襲った。
 そして雅の妄想が現実となった。昼間の男、吉志火麻呂が夜這ってきたのだ。
 まるで餓鬼のようにして激しく雅を抱きすくめる火麻呂。激痛が走り、やがて痺れるような快感に覆われ、恍惚の中に身も心も侵されていった。

 恍惚から醒めると森の中だった。
 嵐の中で火麻呂が全裸の雅を担いで走っていた。
「フオー! フオー! フオー!」
 走りながら歓喜の奇声を上げていた。
 この男は夜這って来ただけでは物足りず、まるで子供が荘園から柿でも盗むようにして雅を略奪してきたのだ。
 風と雨が雅の幸せだったとは言えない過去を洗い流して呉れるような気がした。何よりも嬉しいのがあの葛麻呂から逃げられるかも知れない事だ。

『火麻呂』を幾つかの出版社に応募した時の書評の一部を紹介します。

A社
 芥川龍之介を思わせる簡潔で明瞭な文体で書き上げられた、本格的な歴史小説である。

B社 
 火麻呂の暮らす武蔵国多摩郡の自然描写の美しさ、天皇体制を整えていく当時の日本の姿、庶民の暮らしなどが実にリアルに描かれています。

C社X氏
 時代に翻弄された男と女の数奇な運命を描いた物語である。様々な人物の思惑が複雑に絡み合い、歴史的な事件も巧みに織り込まれて、非常にスケールの大きい仕上がりとなっている。史実に関する作者の該博な知識と自由な想像力が相乗効果となった、歴史小説の意欲作で秀作である。

C社Y氏
 本作品の最大の特色は、登場人物の配置と心理描写にある。主人公の周囲を固める登場人物もみな特異の境遇を背負っており、目が離せない。貴賎に関係なく様々な立場の人物の心境が、その視点にたって切々と語られている。善と悪、敵と味方といった単純な二項対立に還元されない人間の機微が隅々まで描かれており、作者の筆力には感嘆させられる。

C社Z氏
 火麻呂と雅という個の結びつきから始まった物語は、二人を交えた多くの登場人物が歴史のうねりに巻き込まれていくことによってダイナミックさを増し、その愛を普遍的なものとして読者に焼き付ける。二人の子供、蘇芳が能登から助け出され、権力者に近付くあたりは、新たな主人公の物語の誕生をも予感させて、非常に余韻の残る読後感を得ることが出来た。

C社W氏
 前作(フォルモサの娘)に比べて、本作品では作者のストーリーテリングの才が更に冴え、創作者としての可能性をより感じさせられた。特に、史実を素材に当時の人々の生き様を描く表現力は卓越しており、新たな才能を垣間見た気がする。

第一章 藤の御衣 オンラインで連載中
 http://works.bookstudio.com/author/13767/13098/contents.htm へのリンク


第二部 白虎と青龍
白虎の真成が吠え、青龍真備が起ち上がった時。文明国家日本が誕生した!
これは、日本と日本人の原点、天平の神話である。
命を擲って、文明国家日本のために尽くした
養老の遣唐留学生、井真成と吉備真備の物語
第三部 罔両(うすかげ)

罔両(うすかけ゜)が影に向かって問いかけました。
「あなたは、さっき動いていたと思うと、今は止まっています。さっき座っていたかと
思うと、いまは立っています。あまりにも節操がなさ過ぎます」
                           
荘子 斉物論編 より

大和朝廷を支えた藤家(藤原氏)と伴家 (大伴氏)を巡る宿怨に血塗られた、
悲しい恋の物語。

本編 朱雀門外の歌垣より

「難波津に咲くやこの花冬篭り」
 舞いながら唱和する娘たち。
ーいよいよ踏歌が始まりました。まずは女踏歌。私も娘たちと共に踊り、歌いましたー
「一目見し、人に恋ふらく天霧らし、降りくる雪の、消ぬべく思ほゆ」
 優雅に足を踏み鳴らして踊る娘たち。
 薄衣が春風に閃き、乙女の香りが霞のように立ち昇った。
 沸き起こるどよめき。
 若者たちが恋する娘を求めて目を輝かせている。
「うつつには、逢ふよしもなし、夢にだに、間なく見え君、恋ひに死ぬべし」
 舞いながら、歌いながらも恋人を求めて流離う娘たちの瞳。
「よろずよあられ、よろずよあられ」と繰り返しながら足早に退場する娘たち。

「もののふの、臣のをとこは、大君の、任けのまにまに、聞くといふものそ」
 ザッ! ザッ! ザッ! 勇ましくも足を踏み鳴らして登場する若者たち。
 退場した娘たちが目を輝かせ、夫々が恋する若者を見詰めて微笑んでいる。
「霞立つ、春の長日を、恋ひ暮らし、夜も更けゆくに、妹も逢はぬかも」
 男踏歌はもののふとしての心得からいつしか恋の歌に変わっていた。
「うめの花、咲き散る園に、我行かむ、君が使いを、片待ちがてりや」
 若者たちの問いかけに応えるようにして再び登場する娘たち。
「 み空行く、月の光にただ一目、相見し人の、夢にし見ゆる」
 若者たちが男女の境を隔てずに舞い、夫々の恋を歌った。

 舞いながら豊成に近づこうとする孝子の前に広嗣が立ちはだかり、梅の一枝を捧げた。
「この花の一枝のうちに百種の言そ隠れるおほろかにすな」
 先年の七夕の宴で孝子に捧げた短歌を詠む広嗣。
 返歌を詠まずに、その枝を髪に挿す孝子、意味ありげな流し目を送りながら広嗣から離れてゆく。
 哀しげに見送る広嗣。
ーこの日ばかりは、恋に定めは御座いません。朝廷に使える全ての若者が、己の恋を成し遂げるので御座います。ー
 豊成を見失って戸惑う孝子。
 娘たちに取り囲まれた清河の姿が孝子の目に飛び込んできた。
 その清河が一人の娘だけを見詰めていた。
 清河に見詰められたその娘、みやびも大勢の若者の輪の中にいた。
 清河の視線に気付いて頬を染めるみやび。「あのお方が藤の御曹司、藤原朝臣清河様。ああ!
何という運命の徒なのでしょう」、頬を染めたまま顔を曇らせるみやび。

 清河に耳打ちされた吉成が、小走りにみやびの方に駆けてきた。
「私の主人が、貴女様の家と名をお明かし下さいと申しております」
「私の名を? 私の家を?」
「吉成」
 背後から呼ばれて振り返る吉成。
「おお、佐伯の」
「貴様の主人に言うてやれ。今宵限りの恋ならば諦めるが良い。この世では決して結ばれぬ定めの恋であるとな。この娘は」
「私は、私は」
「大伴宿禰古麻呂様の娘みやび姫である」
「大伴宿禰古麻呂が娘みやび」消え入りそうな声で呟くみやび。


外伝 こいぎつね

狐の腹から生まれたという伝説を持つ狐塚来寝麻呂(きつねづかの

きねまろ)と、右京三条の窮れる女王邸に棲む女狐との悲しい恋と、

蛇に転身したくれない姫の物語 。

日本霊異記と今昔物語から生まれた伝奇ロマン。
こいぎつね オンラインで連載中
http://reviews.bookstudio.com/author/11037/10865/contents.htm へのリンク


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