|
尿のpHはいつ測定すればいいのか。食後か、散歩後か、毎日か、一週間に一度でいいのか、等々の質問メールがペットの飼い主さんたちから頻繁に寄せられています。
ご質問をいただくたびに、なるべく懇切丁寧を心がけつつ、必ず回答メールを返信しているのですが、ときには面倒くさくなることもないではありません。
もちろん、ホームページに詳しく書いておけば、回答の手間が省けることは百も承知です。それでもなおホームページに載せようとしないのは、たぶん私が不人情で不親切な人間だからなんでしょう。知見・持論・自説・業界情報など、何もかも洗いざらいホームページに開示してしまうのは、果たしていかがなものか。pHスティックご利用のお客様にだけ、役に立ちそうな情報や知見を個人的にメールでお知らせする。それくらいの優遇や特別配慮があってこそ、お客様への本当のサービスになるのではなかろうか。
ナーンチャッテ。そんなにもったいぶるほど大げさなことじゃないのですが、でも以下の考え方は非常に大事です(この本を立ち読みできないように袋綴じ希望…冗談ですよ!)。
結論を先に申します。何を知りたくて尿のpHを測定なされるのか。検査目的を明確に決めていただくことが肝要です。
何故かと申しますと、尿pH変動カーブの図に示しておりますとおり、尿pHが5.0〜8.0の範囲内で絶えず目まぐるしく上昇下降を繰り返しているからです。一日中、pHが同じ尿を出し続けるなんてことは絶対にあり得ません。ましてやpH不変の尿が数日間も数週間も持続するなんてことは、絶対に起こるはずがないのです。〔痛風や糖尿病の患者さんは常に酸性の尿が出ているとされていますが、それでもpH5.0〜5.6程度の変動があるようです。たまにいつもpH5.0の尿だという患者さんもおられますが、それはpH試験紙の測定限界から外れているだけのことで、実際はpH4.0〜5.0の範囲内で変動しているのかもしれません〕
ですから、明確な目的もないまま「へたな鉄砲も数打ちゃ当たる」式に、むやみやたらと尿pHを測定したってムダです。手間と時間と費用の浪費になるので止めましょう。
何故なら、たまたま一過性に上昇してアルカリ性になったり、下降して酸性になったりしただけかもしれない個々のpH値を、気まぐれに点々と測ってみたところで、得られたデータからは何も読み取れないからです。そればかりでなく、一時的に変化しただけにすぎないpH値に翻弄され、しなくてもよい余計な一喜一憂に陥る破目になりかねないからです。
したがって、pH検査は一日1回でよいとか、一週間に一度でよいという捉え方はナンセンス至極、噴飯ものだと申しても過言ではありません。ましてや、毎月1回、尿pHの定期検査を理由に来院させるなんて、詐欺的行為と言われても反論できますまい。
タイミング@ 朝食前(朝一番尿)
ヒトもイヌもネコも、朝、目が覚めて最初に排泄する一番尿がpH5.8前後にまで下がっていればOK。肝臓や腎臓が正常に機能している証拠であり、健康そのものです。
ただし、1回やそこらの検査で安心してはいけません。少なくとも一週間くらい、毎朝欠かさず尿pHを測定してみてください。連日、朝一番尿が酸性であれば安心できます。
たとえば、室内暮らしのペットの場合、昼間の尿がアルカリ性でストラバイト(尿結晶)が検出されたとしても、夜間、睡眠中に尿が酸性化してくれていれば、ストラバイトは溶けてなくなります。故に、尿路結石が作られる心配なし。したがって、ストラバイトが出たからと言って、尿の酸性化食品を食べさせるなど、我が子(犬・猫)に余計な処置をせずに済みます。
いっぽう、室内暮らしの我が子がアルカリ性の朝一番尿を出し続けているとき、たいていの場合、電気マットや電子レンジなど電磁波の影響です。寝場所の位置を変えるだけで解決できることが多いのですが、ダメなときは個別にご相談に応じさせていただきます。
(独り言です。いったい何をもって朝一番尿とするのか。健康な青壮年者や若い犬・猫であれば、「起床後、朝食前、その日に排泄する最初の尿」が朝一番尿となります。けれども、夜中に何度もトイレに通わなくてはならない老人や、垂れ流し状態の老いた犬・猫にとって、何が朝一番尿になるのかしら。そもそも「朝」とは何ぞや? 日の出をもって朝とすべきなのか? 夏至の頃は午前3時半で空が白みはじめ、冬至の頃は午前6時でも真っ暗です。結局、ヒトもペットも、それぞれの事情によって朝一番尿を決めていただくしかなさそうです)
タイミングA 就寝前
朝一番尿のpH値と比較するために不可欠な重要データですので、数回くらいはチェックなさっておかれますよう、お勧めいたします。
夕食でビフテキとか豚カツなどの強力な酸性食品を食べても、また野菜や果物などの強力なアルカリ性食品を食べても、食後3時間以内、長引いても4時間以内に食品の効果は消え、尿pHの上昇下降が鎮まってきます。それと共に、くつろぎなどリラックスによる効果で副交感神経が作動し、尿pHが高めの弱酸性から中性付近にまで上昇してきます。特に、就寝前には弱アルカリ性になる場合も少なくありません。
もしも、健康不安なしと豪語するあなたの尿pHが夜になっても酸性のままであるなら、痛風や糖尿病の発症する前兆かもしれません。ご注意なさっても損にはなりますまい。
タイミングB 食後
痛風(高尿酸血症)や糖尿病の方々はもちろん、アルカリ性の尿が出続けるイヌやネコの飼い主さんたちも、食品による尿pHコントロールに少なからず関心をお持ちのはずです。
ある食品を摂取することによって、酸性尿のpHアップに有効かどうか。逆に、アルカリ性の尿を酸性化する効果があるかどうか。これをチェックするのが目的なら、食後30分〜3時間以内に尿pHを測定なさってください。
空腹時に食べた食品の影響は、食後20分ほどで尿pHに反映されます。でも、もうちょっと時間が経てば、もっと強く影響が出るかもしれません。そうかと言って、我慢できるギリギリまで排尿をこらえないようにしましょう。我慢しすぎは尿漏れや膀胱炎の原因になりますし、我慢の最中に何かのストレスを受けると自律神経の影響がかぶさってしまい、食品本来の効果が見えなくなる恐れがあるからです。
そんなわけですので、ヒトもイヌもネコも、どうか食後30分〜3時間以内に尿pHの測定を済ませてください。ただし、1回きりの測定結果で判断し結論するのは早計です。ご自分で本当に納得できるまで、何度も何度も測定を繰り返していただく必要があります。さらに、場合によっては食後だけでなく、食前の尿pHをチェックして比較しなければなりません。
タイミングC 運動中、運動後
アルカリ性の尿が出続けているイヌやネコにとって、尿を酸性化する最善の手段が運動です。どんな運動をどのくらいさせたら弱酸性〜酸性の尿が出るようになるのか。これは個体差が著しく、種類、年齢、肥満、体力などによって左右されます。運動中や運動後、排尿姿勢を示したら直ちに尿pHをチェックし、我が子にとって最適の運動量を見出してください。
痛風や糖尿病で酸性の尿を出し続けている方々にもジョギングやウォーキングは必要だと思います。運動によって生産される乳酸などの疲労物質が尿に出てきて、さらにpH値が低下するだろうと思われるかもしれませんが、意外とそうでもありません。どうぞ、ご自身の尿チェックで確かめてみられましては如何でしょうか。
ただし、運動中や運動後にアミノ酸飲料や甘い炭酸飲料などを飲むと、これらの影響で正しいpH値が得られないかもしれません。運動以外の要因が加わらないように、飲食を控えてください(普通の水なら問題なし)。
タイミングD 排尿のたびに
人間の頭脳に染み付いた固定観念を覆すことは至難のわざらしく、ヒトもイヌもネコたちも尿pHが上昇下降を繰り返してこそ正常、と口が酸っぱくなるほど言い続けても、なかなか納得していただけないようです。尿pHが絶えず目まぐるしく変化していることを実感していただくために、ご面倒でも、どうか一度くらいは排尿のたびに尿pHを測って欲しいと思います。
それを私は愚直に3年間も続け、今もまだ続けております。そのお蔭で、酸性尿を出し続けていた私が突然、尿pHのアップすることがあるのに気付きました。アルカリ性食品を食べるなど思い当たる原因がないのに、何故なのか。そこで初めて、大声で笑ったり、感動して涙を流したり、マッサージを気持ちよく感じるなどが尿pHアップに有効であるらしいこと。それがどうやら副交感神経の働きによるらしいことに気付いた次第です。
排尿のたびに検査するのは無理だとしても、お気が向きましたら試しに寄席やマッサージ店などのトイレで自分の尿pHをチェックしてみてください。たぶん私と同様に、新鮮な驚きを体験していただけるはずです。
|