●・祐ちゃんの純情!
○祐ちゃんの全て!3 上京編

シヴァとユウジ。
実は喧嘩してしまったとさ。
ただ陰険に 一人でウジうじ、ジクジク悩むという、
純情な・・・・・というか単にヤキモチ焼きの単に独占欲の強かった、
ただのエゴイストのユウジ。

そして、いよいよ二十歳になった祐ちゃんは上京する事と相成る。
シヴァ?
シヴァの事は、深く聞かないでくれ、もう聞かないでくれ・・・・・。
ドラマチックなはずだったユウジの恋愛ドラマは思いの外あっけなく終了したのさ。

「早く東京行かなくっちゃ!」
ってんである時期に決心をする。
「バンマス、東京に行きたいんですが」、
「オーソーカー!分った、頑張れよ!」、
なんてスムーズに行かないのがこの世の常である。

折角苦労して育てた若ーシ(わけーし)にそう簡単に出て行ってもらっては困るらしく、
引き留められるのはそれはそれで嬉しいのだがバンマスを始め、店の人は中々ウンと言わない。
「どうせ・・・・・東京出たって・・・・・」ってなワケだ。

「トラ(エキストラの事!ここでは代わり)が見つかったら東京行ってイイゾ!」
「いいぞっ!」って、
こんな田舎に俺みたいな才能有るトラの出来る奴なんているワケねージャン。
と無意味な買い被りのユウジ。

ところが割と早くに候補が出現した。
当時、群馬は伊香保温泉に住んでいた加藤というドラマーがオーディションに選ばれた。

当然早くに上京を望むオレは「加藤君で大丈夫です」
太鼓判を押し数年前の丸山先輩と同じように即決をバンマスに迫った。
ドラマー同士、対抗意識(タイコに引っかけた)が強いのはオイラの方だったと思う。
でも大町へ里帰りするたびに一緒に飲んで遊んだ。
とても良い奴だった。
一度皆でカキ鍋を食い、ナゼか加藤一人だけ中って(あたって)しまい、
痺れていたその姿から付いたニックネームが「カキ中」だった。
「お〜いカキ中〜!」「カキ中何処行った〜?」っという塩梅で皆に愛されていた。
オレよりも店の人たちに愛されていたのが帰るたびに理解できて、
当時のオレは複雑な思いをしたモノだった。
皆に親しまれていた加藤は志半ばに若くして亡くなってしまう。

今思うと、当時サクマのドラマー時代だったオイラは生意気の盛りで可愛くなかったと思う。
(じゃ今は・・・・・のツッコミは・・・・・侘びしすぎるぜ)
加藤程、そして当時大変お世話になった先輩ドラマー丸山省吾程、
ユウジは余り愛されていなかったように思うと少し悲しい・・・・・。
その丸山省吾も加藤と同じく天国へ召されたのだった。

「今でなきゃ〜!」このまま居心地の良いサクマにいては上京してプロになる夢を逃してしまう。
少ない金、それからドラムセットをトラックに積んでなんとか東京へ上陸〜!
最初住んだ所は忘れもしない下板橋、
東武東上線・・・・・アー懐かしい。

そのシモイタ時代の事を話そう。 
4畳半一間のみ。
トイレ、流し、共同で家賃¥9800。 
すぐ横を東武東上線が通る。
その音のウルサイ事ったらない。
こんな所で寝られるかなーと不安になる。
・・・・・が、人間って順応が早いのね、慣れるのに一週間かからなかった。

そしてシモイタと言えばすぐに思いだすのが下板橋駅前の焼き鳥屋。
名前は忘れたが良く行った。 

始めて入った時の事だった。
「焼き鳥5本」と頼むと驚いた事に、
「何を焼きましょう」と来た。
「え!」と言って困った俺を見てお兄ちゃん(結構男前)。
「肉みたいなのが良いの?」すかさず「はいソレ5本」
 炭火で焼いて(お燗は一合ずつお湯で暖める、これが美味い燗付け機ナンカはダメ 駄目!)
「オマチ、これがカシラっていうんだよ」と教えてくれた。
「旨い!」小心のオレは少し落ち着いてメニュウを見るとお品書きに色々書いてある。
レバ、タン、ハツ、シロ、コブクロ(お袋では無い、焼かないように)〜焼き鳥って色々有るんだ!
この時初めて知る。

我が青春の地、信濃大町にも確かに焼き鳥屋はあった。
「焼き鳥5本」等と頼み、何の肉か知らずに食っていた(鳥かモツ)。 
中に姿焼きなんてのも有ったな、何の鳥なんだろうか?
と楽しみにしていたら、
焼かれた雀が一羽丸ごと出てきた。
見た目は気モイ、食べたら美味い!  
イナゴの佃煮にしろ、蜂の子・・・・・ホントに長野の人は変なもの食うなー。

だって駅前ですよ〜! 
電車から降りて改札出たすぐ真ん前はすでにアノ美味しい匂いが充満しているんですよ〜!
しかもアル中症候群のユウジですよ〜!
そりゃ自然とソコに足が向いちゃうでショー。
 
財布と相談したらこの魅惑的な匂いから早く抜け出して家路に急ぎなさい!
なのだが・・・・・鼻をつまんで息を止める直前に匂いが充満してしまい、
その誘惑に負けてしまうユウジ。
この精神の弱さ、経済意識の足り無さは中野家ならでは・・・・・???

ついつい足はその店の入り口に向かわれ、
店の前に止まって右手が暖簾に掛かってしまったら・・・・・もういいけません〜!
瞬間思い直して、
まるでビデオの逆回しみたいにそのまま後ずさりして帰って行ったりしたら・・・・・それでは変な人だ!
それほどのお金も勇気も無い。
今も無い!・・・・・ホットケ!

これが祐ちゃんの「焼き鳥屋」ファーストコンタクトの巻!
書いてたら行きたくなった。
近いうち行ってみよう。

20歳天下を取る勢いで上京し、
まずする事は・・・・・焼き鳥屋に行く事ではない。
まず仕事を探す事!
知人、友人と言えば 先に上京している丸さん一人(丸さんコト丸山省吾さん)。
この頃丸さんはビッグバンドに入っていて、
一度アソビ(このアソビは一般に言うそれではなく、
演奏している場に顔を出すこと、あるいはついでに演奏させてもらうことを指す)に行った時は新宿、
歌舞伎町のダンスホールで演奏していた。
「すげーなー!」ステージ脇からビッグバンドでプレイしている丸さんの雄志を見せていただく。
早くオレもああなりたい!
早くジャズ演りたい!
強く・・・・・とてもつよーく思ったユウジだった。

アパートの方にも何回か遊びに行かせて頂いた。
丸さんの奥方は・・・・・例のサクマでピアノを弾いていた女性。
その丸さん以外に知り合いは無く、ましてや友達もいない。
とても寂しかったのを覚えている。
しかし僕の場合17歳には家を出て大町の「さくま」の寮で一人暮らしを経験していたので、
そんな孤独感にも多少は慣れていたのかも知れない・・・・・ガ! 

正直辛い毎日を送った記憶が時々トラウマの如く蘇る。
自分の事は自分でしなくてはいけないのは当然の事だ。
そんな簡単に音楽の仕事などは有る筈が無く、
殆ど毎日アルバイトニュースのお世話となった。

毎日発刊とはいっても内容は毎日変わる訳でなく、
変わるのはホンの数ページのみ、
目敏くそのページを見つけ、
待遇好みに合ったところを探しては即効電話し、
「アルバイトニュース観たんですけど、まだ募集してますか?」
何回面接に行き、
何枚の履歴を書いたコトか!

そして上京後始めて決まったバイト先は、
ナント「マクドナルド」驚いた?
「その顔でハンバーガー売るのかよ?」って〜?
ホットケ!
大きなお世話だ! 
売り手ではなく夜中のメンテナンス(ナットク?)のバイトだった。

営業が終わったと同時にアチコチ掃除するのです。
ダスト(残ったハンバーガー、アップルパイ等)を捨てに行ったり、
それをチョット頂いたり。
鉄板を磨き上げ、器具という器具の部品を外して洗浄、
とにかくキレイに!そしてテキパキと、
そうしないと営業に間に合わないのだ。

朝一番、マネージャーが来てチェック。
駄目な所はやり直し、
その結果を点数にする。
記録に残る事になる。

メンバーはその日によって違う。
もし自分の受け持った日の点数が常に悪いと!
「チミー!これは一体どういう事なんですかー?
チミが入った時に点数が悪いって事はー!」首になるらしい。
辛い、辛い!

この頃の祐ちゃんを慰めてくれた曲は、
荒井由美、 そうです結婚して松任谷由美、
ユーミンです。
ものすごい勢いで、ヒット曲を繰り出して来た。
サイドメンも凄いゾ! ポンタさんを始め、一流のスタジオミュウジシャンが使われていたのだ。
シカシ夜中の仕事はシンドイ。
自然なサイクルに反しているからだろう。
しかしナゼそんな時間帯を選んだかというと、
第一に練習を考えていたからだ!

たとえ練習パットといえども多少の音はする。
やはり練習は昼間しか出来ない。
しかも毎日働くなんてイヤだ!
という事は時給が有る程度良くないといけません。 
となると深夜と言う事に。

思いだした!
マックの前はパチプロになろうとしたんだ。
東上線は大山のパチンコ屋に良く通った。
ある時負けが込んできて、その時ガラスに写った自分の顔が・・・・・、
コ・・・・・ワ・・・・・イ・・・・・それはまるで犯罪者のよう!
そう・・・・・今とそんな変わらない・・・・・ホットケ!
実際儲からないし、(俺の腕じゃ儲かるわけ無い)ほんで諦めた。
という経緯があった。
   
何処で練習したかというと、
最初はアパートの狭い庭。
そのアパートの名前は「鹿野荘」。
しかも東武東上線の脇に位置していた。

その後 国立に越すがそこは桜荘。
どっちも荘が付き、おまけに中央線がアパートの脇を通っていたっけ。
たまたま電話を掛けて来たピアニストの福田重夫。
電話中に聞こえた電車の音に「中野さんは電車のそばが好きなんですねー!」
「好きで住んでるワケじゃねーヨ!」

その狭い庭に練習パットをセットして(ドラムセットに近いパットセット)練習し、  
大家にみつかって怒られ退散。

次に練習場所に決めたのが鹿野荘から徒歩8分45秒の公園。
そこへ練習パットセットを入れた大きなバックしょってベンチに腰かける。
その姿はまるでホームレス(ホットケ!)。
バックの中には練習用パット2個、
シンバルスタンド2本、
それにウォークマンと密閉式のヘッドホン、スティック、教則本。
それらをセットする。

始めて見る人は流石に驚く!
慣れてる人は笑顔を向ける。
時間帯としては夕方が多く、
子供達が野球をしたり、砂場で遊んだりしている横で俺はヘッドホンから流れ出る音楽との一体感!

体を妙に揺らしながら恍惚の人となってドラムの練習に没頭する。
っという光景が想像出来ますか? 
そしてそれを 遠まきに見守る保護者の目には、
一体私はどのように写っていたのでしょうか?
プロを目指すドラマー? 
それともプロを目指すドラマーを装った人さらい?    
それとも変人?  
やっぱり・・・・・ホームレス?  

子供は意外と好きです。
それはきっと、すぐに子供の気持ちが分かるからで、
意識を即座 子供の次元に出来るからだと思うのです。 
が、良い解釈をすると純真!
悪く言うとガキのまま・・・・・成長してない?と言いましょうか。
 
公園で遊んでる子供達も例外ではなく。
仲良しに成るのに時間は掛からなかった。
最初の頃は石を投げられたりしたが!(ウソ)
練習に飽きると「オジサンも入れて?」
仲間に入れてもらって野球を楽しんだりした。

後で計算すると野球やってる時間の方が多かったりしたカモ。 

夕日が綺麗なある日こんな気持ちになったことがある。
練習を終えバックを担いだ帰り道、
僕の目に入って来たのはごく普通の一般家庭の食卓の光景でした。
(立ち止まってズーット覗いてたのでは有りません)
家族団欒の食事している微笑ましい風景が窓から見えたのです。

なぜかその時に「俺には、ああいう家庭は持てないかも知れないなー」と、
何故か予感し、覚悟した事をはっきりと憶えている。
そして一回家庭を失敗したユウジ、
やはりこの時の予感は予知されたモノなのだったのだろうか?  
・・・・・それは神のみぞ知る!



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